健康ゆらし

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手術しか治療法がない変形股関節症を貧乏ゆらしで痛みを軽減させる

貧乏ゆすりというと、行儀が悪く、あまりいいイメージを持たない方もいるかもしれません。しかし、医学的には「ジグリング」と呼ばれ、足を小刻みに動かすジグリングによって、変形性股関節症の痛みを改善し、股関節の関節軟骨の再生を促す可能性があると話題です。

ジグリングを行うことで、これまで不可能とされてきた股関節の関節軟骨が再生することを明かにされました。世界で初めてレントゲンやMRI の画像などのエビデンスによって、股関節の関節軟骨が再生することを証明したのです。

変形性股関節症は、股関節の関節軟骨がすり減って痛みや炎症が生じる病気です。股関節の形状の異常や老化が原因で、股関節が徐々に変形していきます。40~50代で発症しやすく、特に中高年の女性に多く見られます。日本国内の患者数は、200~300万人とされています。

変形性股関節症の治療は、次の3つに大別できます。

  1. 保存療法(薬物・運動・温熱・装具など)
  2. 温存手術(自分の骨を切って股関節の形状を馨える手術)
  3. 人工関節置換術(股関節を特殊な金属やプラスチック、セラミックなどでできた人工関節に 置き換える手術)

変形性股関節症は、一度発症すると、進行を止めることが難しく日増しに悪化するのが一般的です。原因がわからないまま放置していると、「 前股関節症→初期股関節症→進行期股関節症→末期股関節症」と徐々に症状が進み、安静時にも激痛に襲われ、日常のちょっとした動作にも支障が出るようになります。

変形性股関節症は、骨や関節、筋肉など、運動器の障害によって要介護になるリスクの高い状態( ロコモティブシンドローム)の主要な原因の1つで、将来的に車イスや寝たきりの生活を余儀なくされることもあります。厚生労働省が発表した「国民生活基礎調査」によると、要支援・要介護になる要因の23% が運動器障害、21.5% が脳卒中、15.3% が認知症の傾で、運動器障害が第1位となっています。一般的な変形性股関節症の保存療法には、筋力トレーニング や水泳・水中歩行が取り入れられています。

しかし、痛みがあるにもかかわらず、よくなりたい(痛みから開放されたい)一心で筋トレや水泳・水中歩行に取り組んでいる方も少なくありません。痛みは体を守るSOSの危険信号にほかなりません。適度な運動や筋トレが健康維持に有効であることは間違いありませんが、過度な運動や筋トレ、肥満は、股関節やひざ関節に負担をかけ、関節軟骨のすり減りを加速させる危険性があるのです。

筋トレや水泳・水中歩行を禁止している医師もいます。筋トレや水泳・水中歩行は、股関節の周辺の筋肉を強化するために行うものですが、筋肉を強化しょうとする運動は、股関節に強い負荷をかけます。筋力を増強しようとすればするほど、股関節にかかる負荷は増えるのです。

筋トレや水泳・水中歩行は、あくまでも股関節の痛みが取れてから、歩行障害の改善のために行われるべきです。

ジグリングは、年齢に関係なく変形性股関節症の症状を改善する効果が期待できます。しかし、すべての方に効果があるということではありません。重症度にもよりますが、自分の骨盤の骨を切って股関節の形状を整える温存手術(キアリ手術)との併用で、有効率は約75%と考えられています。

ただし、75% というのは、人工関節以外に治療の選択肢がないといわれた症状の重い方を対象とした数字です。毎年5万人以上の変形性股関節症の方が人工関節に置き換える手術を受けているといわれているため、さらに多くの方が人工関節の早期導入を回避できる可能性があることを意味します。

人工関節には、細菌感染や脱臼などの合併症のリスクが伴います。そのほか、約20年という耐用年数があり、若いうちに置換すればするほど、困難な入れ替え手術を受けるリスクが高まります。

ジグリングによって股関節の関節軟骨が再生するメカニズムはくわしくは解明されていません。しかし、副作用の心配がないジグリングで、リスクを伴う人工関節の手術を回避できるかもしれないこれは変形性股関節症の方にとって朗報以外の何ものでもないでしょう。ジグリングは、長期的に変形性股関節症の症状を改善させる、保存療法のかなめとなる可能性を秘めた治療法なのです。

老若男女問わずジグリングを!

ジグリングの効果は、変形性股関節症の痛み改善や股関節の関節軟骨の再生にとどまりません。ストレス発散や集中力の向上をはじめ、血流改善による手足の冷えの解消、足のむくみの改善、肥満の予防などにも有効とされています。

また、ロンドン大学などの研究グループの発表によると、約13000人を対象に行った調査で、ジグリングを行うことが多い女性は死亡リスクが37% 低下すると報告されています。この発表の背景には、少し前から話題になっていた「セセデンタリー症候群」があります。

体をほとんど動かさずにジッとしている状態( セデンタリー)が長いと、細胞の寿命や老化に影響を及ぼす「テロメア(染色体末端粒子)」の劣化が進むため、糖尿病やがんなど、さまざまな病気や死亡のリスクが高まるというものです。

セデンクリー症候群の打開策の一つとして、ジグリングを行うことによって死亡リスクが低下するという発表がなされたのです。ジグリングは、飛行機や電車などで同じ姿勢のまま長時けつ聞過ごすと血流が悪くなり、血せん栓ができやすくなる症状( エコノミークラス症候群) の予防にも効果があるとされています。

さらに、ジグリングには認知症の予防も期待できます。これまでの研究で、歩くことで脳の血流が促進され、認知症の予防になることがわかってきました。足の関節を曲げたり伸ばしたり、足の皮膚をさすったりするだけで、脳の血流が増えることがわかりました。

ジグリングには、歩行と同じような効果が期待できるのです。私は最近、「ホルミシス」という言葉に注目しています。ホルミシスは、ある物質が高濃度あるいは大量に用いられた場合には有害なのに、低濃度あるいは微量に用いられる場合には有益な作用をもたらす現象を示します。

簡単にいえば、「過ぎたるは及ばざるがごとし」ということです。適度な運動や筋トレが健康維持に有効であることは間違いありません。しかし過度な運動や筋トレは、股関節やひざ関節に負担をかけ、関節軟骨のすり減りを加速させる危険性があるのです。

関節を酷使するスポーツ選手は選手寿命が短いといわれています。運動すればするほど、関節軟骨に荷重がかかってすり減ってしまうからです。健康・体力づくり事業財団が100歳以上の高齢者を対象に70~80歳のときの過ごし方を調査したところ、ほとんど毎日体を動かす仕事や運動をしていた方が多いことが判明しました。その過半数が重労働や激しい運動ではなく、散歩などの軽い運動をしていたことがわかったのです。運動をしながら関節軟骨のすり減りをいかに防ぐのかが健康長寿の秘訣であり、スポーツ寿命の延伸につながるといえそうです。

予防医学的な考えからも、関節軟骨がすり減ってからではなく若いうちから予防できれば、健康寿命を延ばすことは十分可能と考えられます。老若男女、プロ・アマを問わず、早いうちからジグリングに取り組むといいでしょう。

股関節やひざ関節に優しい立ったまま・寝たままでもできるおすすめジグリング

今回はイスに座らずに行える2種類のジグリングを紹介しましょう。

立って行う「足タンタン体操」は、日本整形外科学会が転倒予防のために普及に努める「片足立ち訓練」を応用したジグリングです。「足タンタン体操」は、ひざを持ち上げる腸腰筋と、支える大腿四頭筋を鍛えながら、股関節を小刻みに動かすことができ、バランスの訓練にも役に立ちます。

股関節同様、ひざ関節にもジグリングは有効と考えられます。寝ながら行う「足ボンボン体操」は、腸腰筋を鍛えながら、股関節といっしょにひざ関節も小刻みに動かせるため、変形性ひざ関節症の予防・改善も期待できます。2種類のジグリングを行うさいは、体にカを入れずにリラックスするようにしましょう。もし疲れたらすぐに中止し、らくになったら再開することをくり返すと効果的です。スピードや回数はあくまでも心地よいと思える範囲内で行うといいでしょう。毎日継続して行うことが大切ですが、痛みがあったり悪化したりするさいは決して我慢せず、痛みが治まってから再開するようにします。

足タンタン体操

たったまま行うジグリング。下半身の筋力強化とバランス訓練をしながら変形性股関節症の痛みの解消・股関節の骨の再生ができる

  1. 背のある椅子を用意して横に立ち、椅子の背に片方の手を乗せる。
  2. 椅子に近いほうの足からかかとを2cm程度上げ、貧乏ゆすりをする
  3. 反対側の足でも同様に行う

軸足と貧乏ゆすりをする足にかかる体重の割合は9:1が目安(決して無理をしない)

タンタン体操.gif

ポイント

  • 1秒間に1~4回のペースで行う
  • 10分を1セットとして1日3回合計30分行う
  • 回数、時間はあくまで目安がんばりすぎに毎日続けることが大切

足ポンポン体操

寝たまま行うジグリング。腸腰筋を鍛えながら、股関節といっしょにひざ痛も小刻みに動かせるため、変形関節症の予防、改善も期待できる。

  1. 布団や床などにあおむけになる。
  2. 左右どちらかの足のかかとを起点にしてひざを5cm程度上げて下げる小刻みな動作を繰り返す。動かす足のひざ裏に座布団やタオルを置くとさらに安全。
  3. 反対側の足も同様に行う。

ポンポン体操.gif

「健康ゆすり」による貧乏ゆすりで変形股関節症の激痛を和らげる!温存療法の決定版