日本人に多い大腸がん

1981(昭和56)年以降、ガンは日本人の死因のトップを走りつづけています。今や日本人の3人に1人はガンによって亡くなる計算になり、その増加の勢いは衰えを見せません。 また、日本人の半分が「腸ストレス」を抱えている状況です。 ところで、「ガンが増えている」といっても、どの部位のガンも増えているかといえば、そうとはいい切れません。

日本人がかかるガンは昔と様変わりし、減っている部位のガンと増えている部位のガンがあるのです。そして、増えているガンの代表が、大腸ガンです。大腸ガンの患者数は、ここ30年で約5倍に急増し、毎年約9万人が発病しています。厚生労働省の調査によると、ガンの部位別死亡率では、大腸ガンは女性が第1位、男性が第3位で、特に女性の大腸ガン患者の急増が目立ちます。

では、なぜ大腸ガンが増えてきたのでしょうか。それは、現代人の腸の衰えが影響していると考えられています。私たちの腸は、大きく小腸と大腸に分かれています。小腸では、体内に取り込んだ食物の栄養が吸収され、そのあとに大腸で水分などが吸収されて、便になります。 こうした腸の動きは「分節運動」と「蠕動運動」によって行われています。 分節運動とは、腸の特定の部分が収縮して内容物と消化液を混ぜ合わせる運動です。 一方の蠕動運動は、腸の内容物を先送りする遊動です。内容は蠕動運動によって上行結腸、横行結腸、下行結腸と運搬されます。 さらにS状結腸を通過して肛門のすぐ上部にある直腸に運ばれるのです。

内容物が直腸に達すれは、便意をもよおして、便として排出されます。このように、便を排出するためには、蠕動運動が大きな役割を担っています。ところが、現代の日本人には、腸の働きが衰え蠕動運動がスムーズに行われなくなった人が急増しているのです。このように働きの衰えた腸を「停滞腸」といいます。 停滞腸になると、便秘をしやすくなったり、おなかにガスがたまって張ったりしてきます。すると、腸に悪玉菌が増え、アンモニアやアミン、インドール、スカトールといった腐敗臭を出す物質(腐敗物質)を作り出します。これらの腐敗物質は、腸が活発に働いているときなら、便といっしょに体外へ排出されます。

ところが、停滞腸になってしまえば便秘になり、体外へ排出されにくくなります。 その結果、腸が腐敗物質に長期間さらされることになり、大腸ガンの原因になると考えられているのです。さらに、腸にとどまった腐敗物質は、腸壁から吸収されて全身へ運ばれ、頭痛や肩こり・冷え症・口臭・肌荒れなど、多くの体の不調を招くようにもなります。

ではなぜ、腸の働きの衰えた人が増えているのでしょうか。その答えは、現代人の生活習慣にあります。仕事や趣味などに多忙な現代人は、食事やその支度に時間を割くことを、あまりしなくなりました。そうなると、おのずと出来合いの加工食品を多食することになります。

最近では、食生活の欧米化が進み、肉類を多くとるようになった反面、野菜や穀物を食べる量は激減しています。こうした食生活を続ければ、栄養のバランスが偏ります。とりわけ、野菜や穀物に多く含まれる食物繊維が不足しやすくなります。食物繊維には、便のかさを増やしたり、腸の蠕動運動を強く促したりする働きがあり、不足すれば腸の働きが衰えてしまいます。特に女性の場合、 男性に比べて腹筋や横隔膜などのおなかの筋肉が弱いため、より腸の働きが鈍くなり便秘になりやすくなるのです。

ごぼうの「リグニン」が大腸ガンを抑制

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