塩素の添加で発生するトリハロメタン
水道水にはトリハロメタンという発ガン物質が含まれている...というのは、誰もが一度は耳にしたことのある、センセーショナルな情報です。トリハロメタンは大量に摂取するとガン細胞を誘発するだけでなく、中枢機能低下、肝臓・腎臓障害、催奇形性を引き起すと言われている恐ろしい化学物質です。
でも多くの日本人は「それは特別なケースで、まさか自分の家の水道水には入ってないだろう」、あるいは「入っていたとしても微量で問題ない程度だろう」などと考えているのではないでしょうか? しかしそれは大きな間違いです。前出の東京都水道局OBは、『水道水』「塩素のもたらす害の中でもっとも重要なのは、発ガン物質であるトリハロメタンを作り出してしまうことです。
現在の日本では、ほとんどの水道水に多かれ少なかれトリハロメタンが入っています。水道水が100%安全といいきれない理由の一つは、ここにあるのです」日本の水道水にある程度のトリハロメタンが必ずと言ってよいほど含まれてしまうのは、トリハロメタンは水中の有機物が塩素と出合って反応することによって発生する物質だからです。
日本の水道水はほとんどすべてが、塩素を二度にわたり投入する急速濾過方式によって浄水した水ですし、水道法によって蛇口から出る水には塩素が含まれていなければならないことが決められています。塩素による消毒は、現在では衛生を保つ意味で欠かせません。
源水の汚染も問題
それなら水源の有機物のほうをなくすことはできないのでしょうか。塩素による消毒を行っても、水源の水が化学物質や有機物を含まなければ、水道水の危険度はグンと下がりますしカルキ臭もなくなります。 旅行先で「水道水がおいしい」と感じることがありますが、これはその地域の水源が比較的きれいに保たれているためで、そうした地域でも塩素が同様に使われていることには変わりありません。
しかし、家庭排水やし尿が河川に混入するのを避けることは、いまや不可能です。 人間による排水の混入しない自然の水系のなかにも有機物は存在しますが、それはさまざまな微生物によって分解されてなくなる程度のものでした。 しかし、循環系の自然環境が非常にあやふやになっている現在の都市周辺では、それもまた夢でしょう。かつて緩速濾過方式では微生物の力を借りてじっくりと有機物が分解されていましたが、現在何百万人もの人々のために毎日水を供給する急速濾過方式では、浄水はさっさと終わらせなければなりません。
急速濾過方式では、塩素と反応してトリハロメタンを発生させるアンモニアなどの有機物質を除去することはできません。結局トリハロメタンと呼ばれる化学物質の仲間は、程度の差こそあれ、日本の水道の蛇口から出てくる水に必ず含まれてしまうということは、今の状況では宿命と考えるしかないのです
ますます高まるトリハロメタンの危険性と恐怖
水道水に含まれるトリハロメタンの恐ろしさが最初に指摘されたのは、1974年頃のことでした。アメリカの博士は、「塩素と有機物の化合物クロロホルム(トリハロメタンの一種)を含む水道水を飲んでいる人は、地下水を飲んでいる人に比べ、ガンで死亡する確率が10万人につき3人も多い」 と、水道水の危険性についてはじめて警鐘を鳴らしました。
このレポートに敏感に反応した米環境保護庁(EPA) は、全米113都市の水道水を調査して、広範囲の都市の水道に高濃度のトリハロメタンが含まれていることを確認しました。 この調査を重要視した結果、アメリカでは4年彼の1978年には水道水のトリハロメタン類の総量を100ppb(1 リットル中に0.1mg) 以下に規制する法律が制定され、ヨーロッパ各国もこの措置にならって次々に規制が行われたのです。 しかし、日本ではこの種の規制はなかなか迅速に行われませんでした。生活環境のなかで簡単に発生する猛毒・ダイオキシンについても同様でした。トリハロメタンが日本で欧米同様に100ppb に規制されたのは、1981年(昭和56年) のことでした。
しかし、それで危険だった水道水が安全になったわけでは当然ありません。 ハリス博士によれば、トリハロメタンは40ppb で10万人に1人はガンになります。「10万人に1人なら大したことないじゃないか」と思う人もいるかもしれませんが、これは単に人がガンになる確率ではなく、本来はガンにならない人がガンになるという確率ですから、公共的に供給される水道水の危険度としては非常に大きいと言われなければなりません。 40ppb のトリハロメタンが含まれる水道水を安全だと思って、そのまますべての日本人がごくごく飲んでいたら、水道水のせいで1200人もの人がガンになる、という状況なのです。
その上で100 ppb が規制値である、ということは覚えておかなければなりません。欧米では、将来はこれを10~25 ppb に下げる目標をたて、さらに最終的には塩素消毒をやめることを目指して、とりあえず現実的な対処法として1 00 ppbという数値を出しています。しかし日本ではこうした将来目標もなく、これからますます塩素消毒の必要性と水質汚染がエスカレートするなかで、専門家のあいだでも大いに心配されています。
流産の危険性が大きい
トリハロメタンには発ガン性があり、さらに中枢神経、肝臓、腎臓といった、生命活動を支える重大な器官にダメージを与えます。 しかし水道水に含まれる程度のトリハロメタンを日常的に体内に取り入れた場合、このような最終的な大病にいたる前に、日常生活のなかでさまざまな不特定な症状が現れてくると考えられています。 最近の新しい住宅には、壁紙や合板などに使用される接着剤などからトリハロメタンと同様に有害な有機化合物が発生し、そこに住む家族の健康を知らず知らずのうちに蝕むという「シックハウス」の問題があります。 念願のマイホームを手に入れて夢の生活が始まったと思ったら家族の頭痛・吐き気・皮膚炎・ゼンソクなどがひどくなり、その原因が汚染された新築家屋の「空気」だったというのです。このようなシックハウス症候群は、勤めに出るお父さんより家にいる時間の多い主婦や子供たちに多いと言われています。
「空気」という常に体に取り入れている当たり前の必要な物質には、たとえ微量の有害化学物質が含まれていても、毎日の積み重ねのなかで必ず体に悪い影響を及ぼすということなのです。 水の問題も、このシックハウス症候群の空気の問題とまったく同様と言えます。実験や調査で「問題ない」とされたレベルの濃度でも、少量でも必ず含まれるトリハロメタン類を摂取しっづければ、たとえガンや肝臓病といった生死を分けるような重大な病気にならなくとも、たとえばアトピー性体質の子は皮膚が痺くなったりゼンソクが悪化したり、集中力がなくなる、疲れやすい、イライラするといった不特定な症状を引き起こしている重大な要因の1つになっていきます。
日常的に摂取する水の安全性はもっと厳しく考えるべきだということは、アメリカで行われた調査報告も裏付けています。カリフォルニア州健康局が健康影響に関する調査を行ったところ、たとえ基準値内であっても、トリハロメタンを含む水道水をたくさん飲んだ場合には流産の危険性が高くなる、というショッキングな結果が出ました。 米環境保護庁(EPA) の助成のもとに行われたこの調査では、民間の大規模医療機関の協力を得て5 14 4名の妊婦を村象に、水道水に含まれるトリハロメタンの量および水道水の摂取量が、流産とどのような関係にあるかが調べられました。 その結果、妊娠初期の妊婦がトリハロメタン濃度が75ppb を超える水道水を1 日コップ5 杯以上飲んでいた場合、流産率は15.7%にものぼりました(1日コップ5 杯未満、あるいは75 ppb以下の場合は9.5%)。 現在アメリカでもトリハロメタンの水道水に含まれる基準値は100ppb ですから、75 ppb は基準内の( 言うなれば折紙つきの水) であるはずです。
それでも飲み方によってはこうした危険があるということです。 欧米や日本では、この基準値をなぜもっと下げないのでしょうか。それは現状ではまだ塩素による消毒が欠かせず、水汚染もエスカレートはしても抑えることが不可能だからです。つまりトリハロメタンに関する害毒については、蛇口から出たあと家庭でおのおのが村処するしかないということです。
できるだけきれいな水を選ぶ | 生活防衛マニュアルと環境ホルモンについて考える
でもトリハロメタンの危険性について記されています。
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