リコピンにアトピー性皮膚炎の改善効果が確認

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赤色の野菜に多く含まれる色素成分のリコピン。トマトに多く含まれることは、皆さんご存じのことでしょう。

リコピンは、カロチノイド(動植物に広く存在する色素成分)の一種で、抗酸化作用が強いことで知られています。抗酸化作用とは、老化や病気の元凶物質である活性酸素を除去する働きのことをいいますが、近年、リコピンのアレルギー疾患に関する影響を調べる研究が、さかんに行われるようになりました。

アレルギー疾患のうち、花粉症や気管支ぜんそく(肺に通じる空気の通り道である気管支の炎症) を抑制する働きがリコピンにあることは、他の研究機開により、すでに報告されています。
そこで今回、私たち、広島大学大学院医歯薬学科総合研究科皮膚科学の研究チームも、カゴメ株式会社総合研究所との共同研究で、リコピンを用いた実験を行いました。目的は、アレルギー疾患の1つである、アトピー性皮膚炎へのリコピンの予防効果の検証です。アトピー性皮膚炎は、なんらかの原因で炎症作用が起こり、肌の乾燥やかゆみ、発疹を伴う症状です。従来、アトピー性皮膚炎は、幼いころに発症する例が多く、成人期までに自然と治るという見方が主流でした。しかし近ごろは、成長期になっても治らなかったり、逆に大人になつてから突然発症したりするケースをよく見かけます。

こうしたアトピー性皮膚炎を防ぐ手だてとして、抗酸化作用の強いリコピンが役に立つのではないかと考えました。実験では、リコピンと同じカロテノイドである、β カロテン(黄色の色素でトマトにも含まれている) も用いました。

低ミネラルの餌をようとするとアトピー性皮膚炎を発症する特別なマウス

  1. 普通の餌
  2. アトピー性皮膚炎を発症させる低ミネラルの餌
  3. 2にβカロテンを混ぜた餌
  4. 2にリコピンを混ぜた餌

8週間後に皮膚の過失に含まれる水分量や皮膚の角質に含まれる水分量や皮膚のの炎症細胞の数を比較しました。

各層は、皮膚の最も外側にある組織で主に体内の水分が体外へ排泄されるのを防ぎ、肌の潤いや滑らかさを保つバリアの役目を果たします。アトピー性皮膚炎を発症した患者は、この角層の水分含有量が極端に少なくなります。

実験の結果、βカロテンを混ぜたエサを与えたグループ(3)と、リコピンを混ぜたエサを与えたグループ(4) に、角層に含まれる水分量がふえていることが確認できました。

また、炎症細胞の数を比較したところ、アトピー性皮膚炎を発症させた2のグループが高値を示しているのに対し、β カロテンとリコピンを与えた3と4のグループでは有意に低値にとどまるという結果が出ました。

これらの実験結果から、リコピンとβ カロテンの摂取によって、アトピー性皮膚炎の主な症状である、皮膚の乾燥、皮膚の炎症をおさえられたことが明らかになりました。各グループのマウスの皮膚を見ても、アトピー性皮膚炎を発症した2のマウスは皮膚の乾燥が著しく、皮膚にシワが寄り、らくせつ角質の崩れ(落屑) が見られました。ところが、リコピンやβカロテンを与えたマウスは皮膚の水分量が保たれ、2のマウスと比べて、シワの形成や角質の崩れも軽度だったことも確認されています。

リコピンなどを投与する量や投与する時期の検討、また、ヒトへの効果の確認などを行う必要がありますが、今回の実験から、リコピンとβ カロチンを豊富に含むトマトの摂取が、アトピー性皮膚炎の予防につながる可能性を見いだせました。皮膚科の臨床医として、また今回の実験に携わった研究者として、リコピンの研究分野の進展に、今後も大いに期待しています。

発酵トマトの使用感と効果

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