喫煙と高齢からくる「慢性閉塞性肺疾患」

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これまでは長生きを祝う習慣がありました。しかし今では、ほとんどの人が80歳以上生きるようになり、年を重ねるにともなって病気が多発します。
これらの病気を「長生き病」と呼ぶ人もいますアンチエイジング(老化制御)ではなく、ヘルシーエイジング(健やかに老いる)あるいはアクティブエイジング(前向きに老いる)をめざして。

皮膚から細菌が入ると、患部が勝れて赤みを帯び、熟を持ち、痛みを感じ、炎症を起こします。炎症は、ウィルスや細菌などの異物が体内に入った場合、白血球細胞などの免疫系が動員されて、ウィルスなどの異物とせめぎあいを起こす現象といえるでしょう。

気道や肺などの呼吸器系は、こうした炎症の巣窟です。気道は、常に空気が出入りして外界と接しているからです。
風邪は最もありふれた病気です。咽頭痛、鼻たん汁、咳、疲、発熱、だるさなどの症状がでます。これは体がウィルスと戦うことによって起こる生体反応ですから、無理に止める必要はありません。放置しても若い人なら1週間、老人なら3~4 週間で治癒します。

無理に熱を下げて、生体反応を抑える必要はないのです。風邪、インフルエンザ、気管支炎、肺炎などぜんそくは急性炎症で、慢性炎症にあたるのが喘息と慢性閉塞性肺疾患(COPD) です。

我が国の平成23年度の死亡統計では、肺炎は3位、C OPDが9位を占めています。高齢者ならそれぞれもっと上位になるでしょう。欧米でもこれは同じです。この意味から炎症性呼吸器疾患は、重要な長生き病といえるでしょう。

COPDは、喫煙歴のある男性高齢者によくみられます。喫煙というと肺がんを考えがちですが、COPDも喫煙と密接な関係にあり、「たばこ病」と呼ばれているくらいです。

患者は概して痩せていて、咳・痍・息切れを訴えます。我が国での患者数は500万人におよぶといわれますが、実際に病院を受診しているのは20万人くらいでしょう。

喫煙者は普段から咳や疾がありますが、これにともなって息切れも起こせば、COPDの疑いがあります。COPDの症状は喘息に似ています。しかし、喘息はステロイドの吸入でコントロールできるものの、一方のCOPD はできません。最も手軽な検査方法は、スパイロメトリーといわれるものです。

肺活量測定で、できるだけ力を込めて速く呼出させて、はじめの1秒にあたる呼出量を測定します。これを1秒量あるいは1秒率といって、重要な指標となります。1秒率が70%未満ならば、COPDと診断されます。

気道は外界と接しているので、異物が入れば外に出そうとします。この意味で咳は合理的な生体反応です。気管の壁には繊毛という小さくて細かい歯ブラシの毛のようなものが生えています。そこから粘液が出て、異物排出の役割を演じています。

喫煙歴のある人は、この繊毛がすり切れ、常時粘液が排出されているので、慢性的に咳・痰がでやすくなっています。

症状が進行すれば肺には炭粉が沈着し、肺気腫に陥ります。こうなってしまうと、息を吐き出すのに時間がかかるようになります。高齢にともなって段階的に症状が悪化し、呼吸不全を起こして亡くなる「長生き病」といえます。

COPDは喫煙のほかに高齢が関係するので、心血管障害、骨粗鬆症、認知症などを合併することも少なくありません。したがって全身病として認識する必要があります。

喫煙の弊害は、高齢になると様々な臓器でみられるようになります。もし今、たばこが嗜好品として発売されたら、すぐに麻薬扱いとなって厚労省は発売を禁止するでしょう。欧米では徹底した禁煙政策をとっていますが、我が国の政治家には喫煙者が少なくなく、政策はおよび腰となっています。アメリカのたばこ業者は今や、アジアを標的としています。超高齢化の進行するわが国では、禁煙を徹底すべきとと思います。

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