ガンという病気が日本人に増えた原因に、食生活の欧米化があることは、誰にも疑う余地はないでしょう。日本人の食生活は、昭和30年代に野菜や豆類などが中心の食事から、肉類など脂肪の多い欧米型の食事へと急速に変化しました。
それ以降というもの、ガンになる日本人が増えだし、特に乳ガンや大腸ガン、車止蹴ガンといった欧米人に多く見られたガンが、日本人にも増えてきたのです。
しかし、この事実を問くと、みなさんの中には「やはり肉類の食べ過ぎがガンの原因だろう」と考える人が多いのではないでしょうか。
それは問違いではありませんが、もう1つ、ぜひ知っておいていただきたいことがあります。
それは、ガンという病気は、実は栄養失調も原図になっているのです。
この飽食の現代に栄養失調などあるわけがないと思われるかもしれませんが、ここでいう栄養とは、ビタミンやミネラル(無機栄養素)、食物繊維、ポリフェノール(植物の色素成分) などのこと。これらの栄養がガンの予防や治療に役立つことは、世界じゅうの研究でわかっています。
また、体内の細胞を傷つけてガン化させる活性酸素(酸化力の強い酸素)を除去する働きもあります。つまり、ビタミンやミネラルなどの撚恥量の不足が、ガンを招く一因とも考えられるのです。日本人が苦からよく食べてきた食事には、緑黄色野菜や根菜・豆類が食材として使われ、これらの食材にはビタミンやミネラルなどの栄養が豊富に含まれています。
しかし、食事が欧米化するにつれて野菜を食べる量が減り、ビタミンやミネラルの摂取量が不足することで、ガンが増えてきたとも考えられるわけです。逆をいえば、ビタミンやミネラルを積極的に補うようにすればガンは防げるし、すでにガンにかかっている人でも十分に対抗することができるはずです。
ビタミンやミネラルの豊富な野菜や果物を、ガンの治療に活用している食事療法があります。それは、ドイツ人医師が考案した「ゲルソン療法」です。欧米では、ゲルソン療法はとても有名なガンの治療法です。このゲルソン療法によって実際にガンを克服した人が、欧米などでは何千人もいるといわれています。
博士は、ガンを全身の病気ととらえ、ガンになる根本原図を栄養障害と代謝障害(代謝とは体内で行われる化学反応)と考えました。前に述べたように、現代人の多くは、動物性たんばく貿や脂肪を多くとり、ビタミンやミネラルをとる量が不足しています。つまり、栄養のとり方が偏った食生活を、しているわけで、これが栄養障害です。
また、私たちが呼吸をするのも、体を動かすのも、食べた物を消化吸収するのも、代謝がかかわっています。
代謝の機能が衰えれば、免疫力(病気から体を守る力)や自然ゆ治癒力(健康な状態を取り戻そうとする体の働き)も低下し、ガンにつけねらわれることになります。この代謝の機能に必要なのが、酵素(体内の化学反応を助ける物質)と、酵素の働きを助けるビタミンやミネラルです。したがって、ゲルソン療法では、次のような食事の原則が決められています。<ul><li>食事の中心は生の野菜と果物、精白していない穀類。</li><li>野菜ジュースを1 回200~300ccずつ、1 日に13回飲む。</li><li>たんばく質は植物性のものでとり、ガンの原因になる動物性たんぱく質はとらない(例外は、低脂肪チーズや低脂肪ヨーグルトのみ)。ガンを増殖させる塩分や脂肪はとらない。</li><li>アルコールやカフェイン、タバコ、滞製された砂糖、人工添加物の禁止。</li></ul>
そのほか、肝臓の解毒を促すためのコーヒー浣腸と、甲状腺ホルモンの働きを向上させるヨード剤や、細胞内でのナトリウムとカリウムのバランスを整えるカリウム剤の摂取なども、必要とされています。
そして、ガンを治し、再発や転移を防ぐためには、こうした厳格な食事療法を最低でも2~3年は続けるべきとしています。
しかし、ゲルソン療法は、食べてはいけない食品の区別をはじめ、厳格な制約があります。
最初は、制約が厳しすぎて、一般には長続きしない場合が多いのです。そこで私は、ゲルソン療法を簡略化し、家庭で実践しやすい形に変えたものなども登場しています。
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