最近の塩は必要以上にさらさらしている

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私はこれまで2度ほど、「塩の道」として有名な千国街道(新潟県の糸魚川から長野県の松本まで) の約30里( 120キロメートル) を歩いています。

この道は、瀬戸内海でとれた塩を北前船で糸魚川まで運び、そこからポッカと呼ばれた人たちが松本まで運んだ道として知られています。

さすがに、信州は日本列島でもっとも幅の広い場所、つまり海から遠い場所だけに、その苦労の跡は今でも目にすることができます。

私が歩いたのは真夏ですが、冬は豪雪地帯としても有名な場所です。雪崩などで亡くなった方を祀るためのものでしょうか、石仏がいたるところにあります。そこを歩いたとき、地元の老人に「塩はもめる」という話を聞いたことがあります。

その話は、ポッカが雨の糸魚川を50キロの塩を背負い出発したにもか

かわらず、松本に着いたときには40数キロに減ってしまうことがあったためだといいます。この話は、塩の性質をよくものがたっていると思います。

それは、塩に含まれる苦汁の水分を吸着する性質にあります。つまり、雨の日などは水分を吸うために塩は重くなるわけです。ところが、運ぶ途中で天気が回復すれば水分が蒸発してしまうため、軽くなることになります。そのために、塩をかすめとったのではないかと、もめることがよくあったといいます。

私たちが子どものころも、卓上の塩のビンには湿気を防ぐために焼き米が入っていたものです。しかし、現在ではそのような心配はほとんどなくなっています。なぜかといえば、現在の塩には苦汁がほとんど含まれていないからです。

塩を入手する方法を大別すると、岩塩、天然かん水、海水などがありますが、わが国の場合には岩塩や天然のかん水がほとんどないため、海水から塩をとる方法がとられてきました。

昔から「海水は飲んではいけない」といわれますが、実際に、海水は苦汁が多いために、腎臓を硬化させたり、胃や腸の粘膜組織に損傷を与えることになります。

そのため、日本人は海水から水分を除くと同時に、過剰な苦汁を除く方法を考えてきたのです。

最初は、天日製塩といって、天日の熟で結晶塩をつくっていたといわれていますが、天気まかせで効率が悪いために、海草や砂を使い、天日だけではなく燃料も使い、風の力も利用してつくられるようになってきました。
おおまかな発展段階を見ると次のようになります。
  • 天日製塩/天日の力だけでつくる
  • 直煮製塩/直接海水を煮つめる
  • 藻塩製塩/海草を使い濃い海水をつくり、煮つめる
  • 揚浜式塩田製塩/塩田で砂を使い濃い海水をつくり、煮つめる
  • 入浜式塩田製塩/塩の干満の差を利用して塩田に海水を入れ、砂を使い、濃い海水をつくり、煮詰める
  • 流下式製塩/粗朶や竹をつるした枝条架に海水をたらして、風力と天日によって濃い海水をつくり煮詰める

白いパンがおすすめできない理由

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40~50年前、私が子どもの頃、田舎ではカレーライスが、ぜいたくな食事であった。われわれ子どもたちはカレーライスが毎日食べられたらどんなに幸福だろうと夢想した。
しかし、今日、この夢想は現実となった。

事実以上になったというべきかもしれぬ。カレーライスを毎日食べている人間は、それだけで貧乏である証拠とさえなった」まさに、「事実以上になった」という表現がぴったりくるほど、わが国の食生活はとてつもない変化をしてきました。

一言でいえば、食生活の欧米化、多様化ということになると思います。その原因の1つは、あらゆる穀類の消費量が減少しているにもかかわらず、小麦粉の消費量だけが増えていることにあるのではないでしょうか。

小麦粉は、米やトウモロコシなど、ほかの穀類と比較すると、その用途の広さに特徴があります。それは小麦粉に含まれるグルテンというタンパク質の性質によるものです。パンがふっくらとふくらんだり、うどんや中華麺にシコシコとした歯ごたえがあるのは、まさにこのグルテンの性質によるものなのです。

ざっと身の廻りを見ても、小麦粉を使った食材は、パン、ケーキ、クッキー、パイ、まんじゅう、うどん、マカロニ、スパゲッティ、中華麺、てんぷら、フライ、お好み焼き、ピザ、ギョウザなどじつにたくさんあります。

これらの食品を見れば、食生活の欧米化、多様化の大きな原因になっていることがわかると思います。

そして、もっとも大きな問題は、これらの食品に使われている小麦粉そのものが、白米と同じように真っ白になっていることです。

小麦は大きく見ると、表皮、胚芽、胚乳の部分に分けられますが、小麦粉はおもに胚乳の部分でつくられています。つまり、胚芽や表皮の部分はほとんどが使われていないわけです。そのことによって捨てられるビタミンやミネラル類はわずかの量です。

それゆえに微量栄養素と呼ぶわけですが、このわずかな量の積み重ねこそが問題で、まさにちりも積もれば山となるわけです。

パンと小麦粉の歴史について、「ひき臼、あるいは石臼は、今でも僻地で使われているが、イギリスでは、事実上1870年まで、これによって製粉が行われていた。穀物をひく方法が原始的であるということは、口にするパンやポリッジ( オートミルなどのかゆ) に、麦の胚がいっぱいに入っているということであった。

近代のローラー製粉は、粉砕にはずっと効率が簁そのほかの機械器具を使って、胚を効果的にふるい分けて、白い麦粉を残すことができるようになった。

白パンを食べることがはやりだし、白さが重んじられて、一層白い粉を供給する技術が、絶えず追求されるようになった。

ビクトリア朝の英国では、小麦粉とパンが主な食料源であり、貧しい人々にはことにそうであった。だが、精製法が改良された結果、小麦粉の組成に変化が起こった。それは、とりもなおさず1日の推定要求量で、ビタミンB1が半分に、ニコチン酸が3分の1に、鉄分が3分の1に減少したということであった。

もっとも影響を受けたのは貧しい人々で、お金のある人々と違って、ほかの食物でこうした損失を補うことができなかったのである。ドラモンドとウィルブリアムのような権威によれば、とくに女性の間にひどい貧血痛が蔓延したのは、胚を除いたことと、改良した食物の栄養の質の低下とが原因であった。

私たち日本人も、月に1~2度程度しかパンを食べない時代ならばその影響もたいした問題ではありませんが、これだけ小麦粉を使った食品を食べる現在では、その
影響力はかなりのものがあると考えるべきだと思います。

ダイエットはご飯を抜くから失敗する

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このような考え方に対して、「たしかに、米は精白されるほど栄養素は少なくなる。しかし、それらは副食で十分に補えるものだ」といった考え方を主張する人たちもいます。

つまり、白米で不足した栄養素は、副食で十分に補えるというわけです。このような考え方が、「少しのご飯に栄養豊かな副食を食べよう」、あるいは「ご飯は残しても、副食はきちんと食べよう」といった非常識を生み出し、米離れを助長することになっています。

ここでは、このような考え方がいかに間違ったものであるか、具体的な数字を挙げながら説明しましょう。

1日に3杯のご飯を食べるとします。およそ400グラムになります。このときの白米と玄米の栄養素を比較したものが、次のとおりです

それらの中から、ビタミンB1を見ると、玄米は0.64ミリグラム、白米は0.08ミリグラムになっています。
つまり、1日に0.26ミリグラムの差が出ることになります。もし、この0.56ミリグラムを副食で補おうとすれば、具体的に計算してみると、生卵なら933グラム、牛乳なら1400グラム、キャベツなら1400グラム、リンゴなら2800グラムも必要になります。

ビタミンB1を補うだけでも、これだけの副食が必要になってくるのです。その他の ビタミンやミネラル、脂質などすべての栄養素を副食で補おうとすれば莫大な量になってしまいます。

実際、白米を常食としている人の場合、「不足した栄養素を補う」かのように副食を大量に食べることになり、大食になっていることが多いようです。

そのことが肥満の根本的問題でもあります。ファッションモデルやボクシング選手に玄米を食べている人が多いのも、安全に、しかも体力を落とさずに減量することができるからなのです。

いや、減量というよりも、主食から微量栄養素をきちんととることによって、むだな副食が自然に減ってくるといったほうが正解かもしれません。しかも、この表にある成分は、あくまで食品成分表に出ているものだけです。精白することによって失われている栄養素はもっともっとあるはずなのです。

玄米食にすれば副食はそれほどいらないのです。海苔とごま、梅干し程度で十分です。
ご飯&味噌汁で原点回帰

「粕」という字は、なぜ「白い米」と書くのか?

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現代食は、微量栄養素(ビタミン、ミネラル類) がかなりの割合で捨てらてしまっています。これが現代病を引き起こしている原因だと指摘する専門家もいるぐらいです。

その中で、私たち日本人にもっとも影響力が大きいのが白米です。白米は玄米からぬか(胚芽や糊粉層など) をとったものですが、玄米と白米ではあらゆる意味においてまったく異質の食物なのです。

今、日本人のほとんどは白米を食べています。そして、それが普通だと考えている人が多いのではないでしょうか。

「白米を食べだしたのは、せいぜい豊臣秀吉が死んでからのことで、淀君以来です。要するに大阪落城のちょっと前、35年前から、ようやく、日本人は白米を広く食べだした」いうことです。

しかし、この当時の白米は、精米技術がまだまだ低かったため、現代の白米とはかなり趣きの違うものだったはずです。

今日見られるような、真自でぬかの部分がすっかりとり去られた精白米になったのは、明治時代以降になってからと考えられます。

つまり、日本人と米との長いつきあいを見たとき、むしろ白米のほうが特殊だといえるのです。
玄米には胚芽がついています。この胚芽は、米の生命の宿っているもっとも重要な部分で、タンパク質、脂質、ビタミンA 、B1、B2、B6、B12、E、ニコチン酸、パントテン酸、各種ミネラル類を含んでいます。

まさに「天然の栄養素の宝庫」なのです。また、糊粉層の部分には、脂質、タンパク質、食物繊維などがたくさん含まれています。

つまり、玄米には栄養素がたくさん含まれているだけでなく、エネルギーを生産、吸収し、効率よく燃焼させるビタミン、ミネラル類も含まれているのです。さらには、食べた残りかすをきちんと排泄するための食物繊維もついています。

まさに、日本人にとっては理想的な主食なのです。それにひきかえ白米は、精白されて白い部分(胚乳部) だけになってしまい、糖質がほとんどで、タンパク質が若干あるだけで、ほかの微量栄養素はかなり少なくなっています。白い米と書いて粕という文字になるのも、うなずけます。

捨ててしまう粕を使った粕漬けなどは栄養満点です。現代人が不要だと思い、捨ててしまう部分に多くの栄養が含まれているのです。