冷えを解消するには、体を外側から温める以外にも、内側からも温めれば、より保温効果が高まり、免疫力(病気から体を守る力)もいっそう強まります。
体を内側から温める方法としておすすめなのは、ショウガをとることです。ショウガは、米国国立ガン研究所が推奨する「ガン予防食」の一つにも挙げられています。最近では、女性特有の乳ガンなどの予防や再発防止にも、ショウガの働きが注目されているのです。
体の冷えを取る効果を調べるため、ネズミを使った次のような実験を行いました。ネズミの体温は通常、37~38度ですが、セロトニンという神経伝達物質(神経細胞どうしの情報を連絡する物質)を与えると、体温がおよそ2度下がります。
こうして体温を下げた、ネズミに、冷え症の改善に使われる何種類かの漢方薬を与えました。その結果、体温の回復効果が最も大きかったのは、ショウガでした。実はショウガは、料理の味を引き立てる香辛料以外に、古くから漢方薬や民問発としても利用されてきた食品なのです。ショウガのルーツ(起源)は、インドからマレー半島にかけてのアジア熱帯地域といわれています。
中国では、ショウガは生薬(植物・動物・鉱物の一部を乾燥させたもの)として親しまれ、漢方薬の材料としても珍重されました。日本では、奈良時代にカゼの特効薬としてショウガが用いられたという記録が残っています。
西洋でも、保温や消化促進・解熱・鎮痛などの民問薬として用いられてきました。ショウガには、辛み成分のショウガオールやジンゲロール、滞油成分のガラノラクトンといった成分が多く含まれています。これらの成分が多ければ多いほど、体の冷えを取る働きが高まります。私たちの体が冷えるしくみには、神経伝達物質のセロトニンや、体のさまざまな働きを調節するプロスタグランジンというホルモンが問係しています。セロトニンは、血液中の血小板に含まれていて出血を止めたり、血管の筋肉を強く収縮させたりする働きをします。
一方のプロスタグランジンには、いくつかの種類があり、ある種のものは血管を収縮させる働きをします。つまり、セロトニンやプロスタグランジンが働けば、血管が収縮して血流が惑くなるので、体が冷えるわけです。
これに対し、ショウガに含まれるジンゲロールやガラノラクトンは、セロトニンの働きを打ち消したり、プロスタグランジンの生成を阻害したりして、血管の収縮を抑えます。こうした成分の働きによって血流が促され、体が内側から温まるのです。
ひと口にショウガといっても、根ショウガや土ショウガ、谷中ショウガなど、さまざまな種類が市販されています。このほか、品種改良によって誕生した、日本固有の「金時ショウガもあります。金時ショウガは、ふつうのショウガに比べて小しぶりで、
切り口が濃い黄色をしているのが特徴。実は、この金時ショウガには、ショウガオールやジンゲロール、ガラノラクトンなどの成分が、抜群に多く含まれているのです。ふつうのショウガに比べて約4倍のガラノラクトンが含まれ、ショウガオールやジンゲロールも圧倒的に多いことがわかったのです。このことから、金時ショウガは、冷えを取り除いて体を温め、免疫力を強める働きが特に大きいと考えられます。
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