現代人の食習慣において、なぜビタミンやミネラルなどの微量栄養素が欠乏しているのでしょうか。それを考えることが大切です。
現在の日本は経済大国といわれる一方で、外国などからは「日本人は働きすぎだ」といった指摘も受けていました。「勤勉であることはいけない」といったような風潮はどうかと思いますが、ある意味、「働きすぎ」が日本人の食生活をダメにしたという考え方もできるのかもしれません。やや偏った見方にも思いますが、実際大きく影響していることがわかります。
というのも、わが国の経済成長は、主婦の調理時間とサラリーマンの食事時間を奪うことで成り立っている…と考えることもできるからです。
つまり、食事をつくる時間のない主婦は「簡単につくることができる食品」を求め、食事時間のないサラリーマンは「簡単に味わえる、満腹になる食物」を求めることになったのです。
主婦が八百屋さんや魚屋さんで、野菜や魚の「顔」を見ながら買い物をし、煮干しでだしをとった味檜汁をつくり、夫は炊きたてのご飯をゆっくりと食べる。
以前の日本であれば、どこの家庭でも見られた当たり前の光景が、今や最高のぜいたくになってしまったのです。
このような時代の要求に応えたのが、冷蔵庫や電気炊飯器であり、スーパーマーケット、コンビニエンスストアであり、化学調味料、加工食品、レトルト食品、冷凍食品などではないでしょうか。
そして、食卓を飾る食品は「顔」の見えない加工食品、つまり「工場製品」だらけになってしまったのです。
実際、コンビニエンスストアには、約2000種以上の食品があるともいわれていますが、その中で「顔」の見える、つまり原形のわかる食物は60種類もないといいます。わかりやすくいえば、ポテトチップスやオレンジジュースはあっても、じやが” いもやみかん(オレンジ) はないということです。
そして、それらの加工食品がつくられる工場の経済原則はあくまで、大量生産(商品の均質化) であり、長期輸送、長期保存ということになります。
その原則を守るためには、微量栄養素(ビタミンやミネラル類) や、今、必須といわれている食物繊維はきわめて不都合な場合が多いのです。
微量栄養素や食物繊維は私たち人間にはなくてはならない不可欠なものですが、それは人間だけでなく、食物を悪くする虫やカビ、細菌などの生物にとっても同様に不可欠なものだからです。
また、やっかいなことに微量栄養素は、湿気や酸素を好むことが多いのです。まさに、経済第一の大規模工場にとって、微量栄養素は邪魔者 なのです。その結果、あらゆる食品が精製されることになり、その食品の一部分だけを食べるようになってしまったのです。
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