高血糖状態は全身の動脈を硬くしてしまい特に腎臓・目・神経で起こると症状は深刻
糖尿病で最も怖いのは、血液中に異常に増えた糖によって血管が傷つき、合併症を招くことです。血糖値が高い状態(基準値を上回る状態)を何年も放置すると、末梢の細い血管ばかりか太い血管も傷ついて、全身で動脈硬化(血管の老化 が進み、さまざまな合併症が引き起こされることがわかっています。 特に多いのは、細い血管が傷つくことで起こる糖尿病腎症・糖尿病網膜症・糖尿病神経障害で、これらを糖尿病の3大合併症と呼びます。
糖尿病の三大合併症がどのようにして起こるのかは以下のとおりです。
- 糖尿病腎症腎臓には糸球体と呼ばれる非常に細い血管の集まりがあり、ここで血液をろ過して尿の原料を作ります。この糸球体の血管が高血糖の影響で傷み、硬くなったりつまったりして、血液を十分にろ過できなくなるのが糖尿病腎症です。糸球体がより傷んでくると、体内の老廃物を排泄できなくなって尿毒症を起こし、最終的には人工透析が必要になります。日本では現在、新たに人工透析を受けている方の約4割が糖尿病腎症で、その数は年間1万6000人に上ります。糖尿病腎症の場合、はかの腎臓病に比べて生存率が極めて低く、人工透析を始めて5年後まで生きる人は半数にすぎないのです。半分です。
- 糖尿病網膜症目の網膜( カメラのフィルムに相当する器官)に張りめぐらされた細い血管が、高血糖の影響でつまったり変形したりすると、目に十分な酸素や栄養が行き渡らなくなります。そこで急ごしらえの新しい血管が作られますが、この新生血管は極めてもろいため、被れて出血すると急激な視力低下のほか、網膜剥離を引き起こし、最悪の場合は失明します。糖尿病網膜症で視力を失う人は年間約4000〇人。これは緑内障に次ぐ、日本人の中途失明原因の第2位です。
- 糖尿病神経障害よく現れる症状は、足に湿った靴下をはいているような也違和感、、つまさきや足の裏のしびれなどで、糖尿病の患者さんの7割に見られます。必ず両足か両手の先端から同時に起こるのが、糖尿病神経障害の特徴です。やがて神経が完全にマヒして感覚が失われ、しびれや違和感がふろなくなります。熱い風呂に足を入れても平気でいたり、手足をぶつけても痛みを感じなかったりします。ケガをしたことがわからず放置すると、最悪の場合、壊症(体の組織が腐ること)を起こし、その部分を切断しなければならなくなるのです。
以上が糖尿病の合併症です。
初期から高血糖を改善しておかないと高血糖が記憶され合併症、脳・心筋梗塞の危険大
高血糖状態になっても、糖尿病と診断されなければ(境界型であれば)糖尿病合併症を防げると思っている人がいますが、実はそう簡単ではないのです。 動物実験で、糖尿病の初期段階から血糖コントロール(血糖値をできるだけ基準値に近づけること)をきちんと行わなければ、後になって厳格な血糖コントロールを行ったとしても、合併症が起こりやすいことが確かめられています。
最近になって人間の場合も同様であることが、アメリカとカナダで実施された糖尿病の大規模な追跡調査で明らかになりました。 イギリスの研究でも、2型糖尿病(生活習慣が主原因で起こる糖尿病)の方を観察した結果、初期に血糖コントロールが不十分だと、その後の血糖コントロールがうまく行われても、合併症の危険度は低下しないことが確かめられています。 これらの事実は、高血糖の状態が5~10年も続いたら、その間に体が高血糖状態を記憶して高血糖の「マイナス」を抱えてしまうということです。 そのため、遅ればせながら血糖値を下げて低い状態を保ったとしても、合併症の発症・進行が必ずしも抑えられないのです。この「高血糖のマイナス」の正体が「AGE」と呼ばれる物質ではないかと、最近注目されています。
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