これまでの記事で説明してきた免疫細胞療法の効果を、ここでは具体的な症例で見てみましょう。ガンの中でも、膵臓ガンは難治とされ、その5年生存率は5~10% と、かなり低い数字です。唯一の根治療法は手術ですが、術後の再発が高率であることから、抗ガン剤などの治療が求められます。
こうした難しいガンに対しても、免疫細胞療法が大きな効果を上げることがあります。しかも、次の患者さん(76 歳・男性) の例では、膵臓ガンの術後に抗ガン剤を用いることなく、活性化自己リンパ球療法だけで、長期問再発なしという見事な結果を得ています。
その男性は、2001年の検査で膵臓に直径5cmで胃、脾臓、大腸に浸潤した(Ⅵ 期=ほかの臓器に転移が生じた場合などの段階) ガンが見つかり、その年の11月に手術を受けましたが、術後の抗ガン剤の使用には激しい副作用を伴うことから、本人の希望で抗ガン剤治療は行っていませんでした。そこで、翌年の2月から、再発予防のため2過問に1回の割合で、活性化自己リンパ球療法を受けるようになったのです。
その経過は順調そのものでした。4月の検査で再発が見られなかったことから、以後、その男性が以前からかかっていた医師と連携して治療を続けるようになったのです。そのうち、治療を受ける問隔も徐々に長くなり、2003年からは3ヶ月に1回程度になっていましたが、経過は順調。今年の5月の時点で腫瘍マーカー(ガン細胞に問達して血液中に増えてくる物質)も正常範囲内で、再発は見られません。
次の症例は、やはりガンの中でも極めて難治とされるⅣ期の再発胃ガンに対して免疫細胞療法を行った例です。その女性(74歳) は、2001年ごろから胃に重い痛みを覚えるようになり、精密検査の結果、胃ガンが見つかり、手術を受‥けました。
しかし、2003年に腫瘍マーカーの上昇が認められ、大動脈の周囲リンパ節が勝れていることから、有効性が高いとされる抗ガン剤による治療が始まりました。
2005年に腫瘍マーカーが再び上昇したのですが、下痢や吐きけ、体重減少など、抗ガン剤の副作用が強く出たため、抗ガン剤による治療は中止。
漢方薬による治療だけとなりました。これは事実上、もはや現代医学での治療は不可能ということを意味します。そこで、2006年3月から、当院で2過問に1回の割合で活性化自己リンパ球療法を受けることになりました。もともと他院で受けていた漢方治療は、それまでどおり継続しました。
すると、その年の7月の検査では、大動脈周囲リンパ節転移が消え、病状はすっかり好転したのです。その後、6カ月問隔で活性化自己リンパ球療法を続け、体調もよく、食欲も良好な状態で経過しています。
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