名医でも診断が困難なケースもある

緑内障で視野が欠けてしまつたら、もとに戻すことはできません。そのため、緑内障の治療では、早期発見と症状の進行ぐあいをチェックする定期検診が何よりも重要とされています。緑内障についてはこちら。

通常、緑内障の診断には、眼圧検査(眼圧とは眼球内の圧力)、眼底検査、視野検査の3種類があります。この中でも早期発見に威力を発揮するのが、眼の奥にある網膜 の状態を調べる眼底検査です。

特に、緑内障でありながら眼圧が正常範囲にある「正常眼圧緑内障」では、眼底検査が欠かせません。ほかのタイプの緑内障は眼圧検査で発見できても、正常眼圧緑内障は眼底検査を行わないかぎり、網膜にある視神経の異常がわからないのです。

近年、わが国では正常眼圧緑内障になる人が著しく増加しています。今や緑内障全体の六割以上が、正常眼圧緑内障といわれるほど。そのため、緑内障が疑われる人にとって眼底検査は必須の検査法なのです。

ただし、従来の眼底検査にはいくつか問題点がありました。まず、医師によって診断内容がまちまちだったことです。従来の眼底検査では、日に強いフラッシュ光を当てて眼底をカメラで撮影し、視神経乳頭の状態を調べます。

当然、平面の写真で診断するため、仮に眼球内に異常があつたとしても明確には判別できません。緑内障を発症すると、眼圧の影響で視神経乳頭がへこんだせんいり、その周囲にある神経線維層が薄くなったりします。そうした異常を平面の写真で見極めるのは至難のわざなのです。

実際、従来の眼底検査では、医師の技量や経験によって判断が分かれるばかりか、熟練した医師の間でも診断結果が分かれることが少なくありませんでした。

網膜の状態を3Dで閲覧できる

そうした中、医師の経験や技量に左右されることなく緑内障の有無がわかり、患者さんの体力的負担が軽い新たな眼底検査が実用化され、全国の病院に 広まりつつあります。それは専用の解析装置で網膜の状態を立体的な画像として映し出す「三次元画像診断」です。この三次元画像診断による眼底検査なら、解析した内容がすぐにコンピューターの画面に映し出され、網膜のようすや、視神経乳頭の異常が手に取るようにわかります。

  • 共焦点走査レーザー眼底鏡眼底に光を当てて眼底の断層写真を撮り、コンピューターで眼底の状態の立体像を作り、解析する装置です。
  • 共焦点走査レーザトポラリメーター特殊なレーザー光を眼底に当て、神経線維層の厚みを調べる装置で、極めて初期の緑内障の発見に有効です。
  • 光干渉断層計超音波によって眼底の形をとら、え、それを立体的な画像にする装置です。視神経乳頭のへこみと網膜神経線維の状態を同時に解析することができます。以上の三種類の解析装置のうち、3の光干渉断層計は最近、大きな改良が施され、解析装置

の性能が飛躍的に向上しました。従来の光干渉断層計は情報処理能力が高いとはいえず、検査時問が長くかかりました。それが、最新機種に変わつて多くの情報を効率よく処理できるようになり、短時間で検査が可能になったのです。

いずれにして、も、三次元画像診断の解析装置を使えば、どの医師でも高い精度で緑内障の診断ができるようになります。共焦点走査レーザー眼底鏡を導入した際、初期の緑内障の患者さん50人を眼底検査したところ、医師の経験度や習熟度にかかわらず82% の確率で正しく診断することができたのです。

従来の眼底検査では、習熟した眼科医なら80~90% の確率で緑内障を正しく診断できるとされていました。ですから、三次元画像診断の解析装置を使えば、ほぼ同等の確率で正しく診断できることになります。

しかも、三次元画像診断ではフラッシュ光や造影剤などは使用しないので、患者さんの体力的な負担が軽くてすみ、従来よりも短時間で検査できることも利点といえるでしょう。

なお、三次元画像診断による眼底検査は、健康保険が適用されます。保険適用時の自己負担分はわずか数百円で、それに加えて診察料やほかの検査の費用などがかかります。

緑内障の原因は花粉症などに使うステロイド剤

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今や抗生物質と並び、現代医学に必須の薬とされているのがステロイド薬です。ステロイドとは、副腎皮質ホルモンと呼ばれる脊椎動物に作用するホルモンの一種。

副腎でコレステロールから生成され、私たちの体内に存在しています。例えば、体を男性らしくする男性ホルモンは、副腎皮質ホルモンの1つです。

副腎皮質ホルモンには、炎症を抑えたり、乱れた免疫反応を鎮めたりする強力な薬理作用があります。

そのため、医療現場でステロイド薬が特効薬のように使われているのです。おそらく、みなさんにとって最も身近なステロイド薬は、アレルギー病の1つである、花粉症を抑える注射や内服薬、点眼薬でしょう。

ステロイド薬の抗炎症作用、免疫抑制作用は花粉症のつらい症状を鎮めるのに最適なのです。

ところが、効き目が強いぶん、ステロイド薬には多くの副作用があります。感染症にかかりやすくなるほか、高血圧、糖尿病、脂質異常症、骨粗鬆症、消化性潰瘍、発疹などの起こる恐れがあるのです。

実は、ステロイド薬の副作用として、緑内障が起こったり悪化したりすることもあります。特に、高齢で近視の人、眼圧が基準値ぎりぎりの人、

また、家族が緑内障になっている人も含めて、ステロイド薬の使用で緑内障を招く危険が大きいと考えられています。

なぜステロイド薬で緑内障が起こるのか、明確な理由はわかっていません。おそらく、薬の影響で日の房水排出が悪くなり、眼圧が高まるからではないかと指摘されています。

ステロイド薬を使用する人は、定期的に眼圧・眼底検査を受けるようにしてください。そして、副作用による緑内障が疑われる場合は、すみやかに薬の使用量を減らすか、使用を中止して、医師の指示を仰いでください。

薬の中止が早ければ、上昇した眼圧は、大半は正常に戻ります。問題なのは、ぜんそくの患者さんのように、ステロイド薬を減量・中止すると、発作を起こす危険がある場合です。

薬を減量・中止できない人は、眼圧をなんらかの方法で下げる必要があります。なお、ステロイド薬の減量・中止で眼圧を正常に戻すことはできてもいったん視野が欠けてしまったら、ステロイド薬をやめても、欠けた視野はもとには戻りません。

今年の春は、花粉が大量飛散するといわれています、花粉症に悩んでいる人は、くれぐれも注意してください。

視野の欠けがすすみ最悪は失明の危険もある

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緑内障は、視神経が障害を受けて視野が狭くなる病気です。いつたん視野が欠けてしまうともとには戻りませんが、初期のころは自覚症状に乏しく気づきにくいため、症状が悪化して失明を招く恐れすらあります。

実際、緑内障は日本人の中途失明原因の第1位です。

厚生労働省の調査によると、緑内障の治療を受けた人は1987年には14万4000人でした。ところが、2005年には3倍以上の54万人に達したと報告されているのです。そして2015年の潜在患者数で300~500万人となっています。これは本当にひどい状況です。

調査結果から推計すると、全国で緑内障になっている40歳以上の人は約340万人、緑内障の疑いのある人は約500万人もなるのです。

つまり、緑内障の治療を受けている人は1割程度で、ほとんどの人は放置したままなのです。そうしたことも影響してか、毎年2000人以上もの人が、緑内障によって視力を失っていると推測されています。

では、緑内障はどのようにして起こるのでしょうか?緑内障を招く重大原因は、眼圧(眼球内の圧力) の異常な上昇です。
眼圧の上昇は、眼球内の毛様体から分泌される房水 の排出が悪くなり、眼球内の房水の量が増えることによって起こると考えられています。

もそも房水は、分泌されたあとに隅角という排出薄から静脈に回収されます。しかし、隅角がつまって回収がうまくいかないと、房水が眼球にたまって眼圧が上昇するのです。

眼圧が高くなりすぎると視神経が圧迫されて傷つき、視力の低下、視野の欠けといった緑内障の症状が現れるのです。

緑内障には、大きく分けて3種類があります。


このうち、日本人の緑内障患者の実に7割が、正常眼圧緑内障と診断されています。困ったことに、正常眼圧緑内障は、眼圧が基準値内であるため一般の検査で見つかりにくく、多くの人は視野の欠けが進んでから異常に気づきます。

今のところ、眼圧が基準値内なのに緑内障が発症する原因はわかっていません。おそらく眼圧には個人差があるため、基準値内であっても上昇すれば、少なからず視神経に悪影響が及ぶからではないかと考えられています。

また、日本人の目は欧米人よりも小さく、もともと眼圧が低めの人が多いため、眼圧のわずかな上昇でも視神経が影響を受けやすいことが指摘されています。

緑内障で欠けた視野は回復しないため、早期発見と早期治療が重要です。ところが、前述したように緑内障は自覚症状に乏しく発見が遅れがちな傾向にあります。

あらかじめ自分が緑内障になりやすいかどうかを知っておけば、発病を未然に予防できるでしょう。

緑内障になりやすいタイプの人は、血流の悪い人です。運動不足の人、低血圧の人などは血液の循環が悪く、眼球内の房水の排出もスムーズにいかず眼圧が上昇しがちです。

また、血流の悪化という点から考えれば、心臓病や糖尿病の人も緑内障に気をつけてください。

近視の人も緑内障になりやすいタイプといえます。特に高度(強度)近視になると、眼球の形が前後に長くなります。そのため、網膜や視神経が不均等に伸ばされ、傷つきやすくなるのです。

実際、近視の人は概して眼圧が高く、視力が正常な人に比べて約2倍も緑内障になりやすいと報告されています。緑内障になりやすいタイプの人は、40歳を過ぎたら年に1一度は眼科で検査を受けたほうがいいでしょう。

最近は三次元画像診断という精度の高い検査法が普及し、正常眼圧緑内障であっても正確に診断することが可能です。